お花屋さんの1日の仕事はどのように進んでいくのでしょうか。
1日の動きが気になっていることと思いますが、1日の動きを見る前に、まずお店には、1日のスケジュールだけではなくもっとたくさんのスケジュールが存在することを知っておきましょう。
お店の運営スケジュールは4通りある
お花屋さんに限りませんが、お店にはおおよそ
●年間のスケジュール
●月間(もしくは季間)のスケジュール
●週間スケジュール
●1日のスケジュール
の4つのスケジュールがあります。
その日1日に何をするか?は、1週間の中でも曜日ごとに異なる店舗が多いでしょう。
具体的な内容はお店によってまったく異なってきます。
どの店舗でも同じ、どの曜日でも同じ、というスケジュールはありません。
ですが、ここでは参考までに、おおよそこんな感じ、という花屋さんの1日の図を紹介しますね。
お花屋さんの1日の仕事スケジュール例

6:00 仕入れ
9:00 開店準備 品出し、花の手入れ、水やり
10:00 開店 前仕入の品の手入れ、水替え
以下、開店中ずっと商品作成や通常の接客販売や配達を行いながら
13:00 仕入れ品の水揚げ・水やり・値付け
16:00 仕入れ品での商品作成・発送梱包
17:00 翌日仕入発注 翌日準備
19:00 閉店
このような感じでしょうか。
仕入れる品は、曜日ごとに切り花か、鉢かが変わります。
仕入れに行っている市場の切り花セリ日・鉢セリ日によって変わります。
開店時間に何をするか?もお店の方向性によって異なります。
配達に行く店舗・行かない店舗、活け込みに行く店舗・行かない店舗、結婚式や葬祭の仕事がある店舗・ない店舗
観葉植物などのレンタルをしている店舗・ない店舗
商品が切り花か、鉢植えか、プリザーブドか等々、もろもろのお店の事業方針や事業展開によって、具体的に何をするかはまったく異なってきます。
必ずこれをする、という業務はない。と思っていたほうが良いでしょう。
掃除と花の手入れ(世話)はすることになると思いますが。
お花屋さんの1クール(1イベントごと)の仕事の中身
ちなみに、仕事1クール(1ベントごと)の仕事はこんな感じです。

母の日やクリスマス、年末年始といった大きなイベントは6か月前には動き始めます。
常に季節の先取りをしながら企画を考えていきます。
事前に商品の内容や使う資材や発注する農家さんなどを決めておくことで、ナマモノの花でも安定数の用意ができるのです。
ただ、ただ、です。
こうした季節のイベントの準備や企画を行って、事前にいつどんなものを提供しようかと準備しているお花屋さんはおそらく少数です。
大手企業の店舗や、数店舗展開している地元で大きなお店、意識の高い店長さんがいるお店、といったところでしょうか。
なので、お花屋さんのスタッフをしている方でも「そんな企画なんてやったことない」ということも大いにあると思います。
あなたの働いているお店にこうしたスケジューリングがない場合もあると思いますが、お店の運営が軌道に乗っている店舗には、こうしたシーズンごとやイベントごとの運営サイクルが基本、あります。なので、こうしたスケジューリングがあることを認知しておくに越したことはないでしょう。
お花屋さんの仕事はとても業務範囲が広い
お花屋さんはお店=小売店です。
製作販売するオーダーメイドの入るサービス業でもあります。
小売店ですので、販売計画を立てて商品の手配をし商品の仕入れをしますが、花屋さんの場合は仕入れた花は水を吸っていなかったり、下葉の処理がまだのため、仕入れたままの姿ではまだ販売することができません。
そこで、まず販売できる状態まで持って行く花の手入れや水揚げをします。
素材である1本単位の花は手入れを水揚げが終われば販売可能になります。
花が十分に水を吸い上げたら、それからセット束や仏花、フラワーアレンジメントなどを製作する作業を行います。
このあとが一般的な販売の仕事になります。
仕入れから販売するまでにかなりの手間と時間がかかります。
しかも、仕入れた素材の花も、できあがったフラワーアレンジメントなどの商品も、ともに傷みやすいナマモノのため、基本的に即日~長くても数日で販売しきらなくてはなりません。
即日売り切らなければならない業種…魚屋さんやパン屋さん、レストランと同様の販売サイクルになります。
また、オーダーメイドの品を製作するときには、お客さまとの意思の疎通が欠かせません。
ヒアリングし、お客さまの望みをお客さまの予算や制限内で叶える現実化の手腕が必要です。
お客さまの希望を現実化するためにフラワーアレンジメントを作る技術も使いますが、どちらかというと希望を聞き出すカウンセリングや、状況に合わせるための花の選択、デザインの選択といったコーディネーター、コンシェルジュ的な要素のほうが強いです。
さらに、店舗での広告やディスプレイなどの販促も必要です。
近隣に営業に行ったり、いまどきならSNSなども営業や販促の一環といえるでしょう。
そのためには写真撮影の技術や加工、インターネットの活用、文章まで仕事に含まれます。
販売管理や販売後の統計、数字の管理、仕入額や支出といったお金の管理と経理、アルバイトさんを雇って教育する人事やスタッフ指導もお店の仕事です。
これに加えて、ブライダルや活け込み、レンタルなどの業務を行っている場合はさらに取引企業、取引店との交渉や営業まで含まれます。
一般企業に勤める場合はそのうちの企画だけ、営業だけ、事務だけ、経理だけ、といった一部を担当するのが普通ですが、店舗で働く場合は業務の全てを担当することになると思ったほうが良いです。
お店を自分で興して経営する経営者はもちろんですが、お店で働くスタッフもかなりの範囲の業務を行うことになるでしょう。(詳しくは後述)
思い描いていた仕事とは違う可能性が高い
おそらく、「お花屋さんで働いてみたいな」って初めて思ったときに思い描くであろう、花に囲まれた中でフラワーアレンジメントを作るという絵面とは、ほど遠い毎日になります。
もちろん、フラワーアレンジメントを作る時間はありますよ。
ありますけど、お店に並べる商品の製作では、好きな花をたっぷり使って優雅に花を飾るようなお金の余裕も時間の余裕もありません。
・予算が決まっていて
・使用花も決まっていて
・製作数と製作時間も決まっていて
・1点1分~10分程度のタイムアタック!で作ると思ってください。
フラワースクールのレッスンの時間とは全く違う状況です。
オーダーメイドの場合、お客さんの予算と希望で手早く作ることに加え、お客さんの願望や状況を聞き出し、その状況に的確な花やデザインを選択するというテクニックも追加されます。
そして制作をする時間はあくまでも業務の一環であって、ほとんどの時間は違うことをすることになります。
(具体的な業務の内容は割合はそのお店ごと、店長さんごとに異なってきます)
*自分の納得いく材料と時間をかけて作品を製作するのは「アーティスト(芸術家)」になります。「フラワーデザイナー」を調べてみてくださいね。
お花屋さん勤めと いわゆる会社勤めの違い
いわゆる会社に勤める場合は、仕事の内容が限定的なことが多いです。
営業なら営業だけ、事務なら事務だけ、経理なら経理だけ、人事なら人事だけといった具合に。
ところが、お花屋さんに限りませんが、小規模の店舗に勤務する場合、先のスケジュールの図解にもあるように、一般的な会社なら数人、数十人で分担するしごとをお店という現場にいる数人ですべて行うことになります。
チェーン店の場合は 仕入れや経理は本部がやってくれるケースが多いですが、個人店舗や数店舗くらいの規模の場合は3人で全部やる、7人で全部やる、といった状況になります。
・事業計画を立てる、イベント企画を立てる
・具体的な商品やサービスを企画する
・必要な資材や花、販促POPの準備
・ほか広告や営業
・実際の仕入れ、商品の製作、陳列
・仕入れた花の手入れ等の商品管理
・店舗の清掃
・接客販売、配達・配送
・閉店後の金銭管理、帳簿付けまで
「全部やる」ことになる可能性が高いです。
もちろん最初は接客や、簡単な製作から担当することになるでしょうが、勤務2年目、3年目となってくると全部担当することになっていきます。
お花屋さんで働く場合、お花屋さんに勤めるかたちではありますが、仕事の内容としては開業している自営業の経営者と同じになります。
最初から、いわゆる会社勤めとは違う、
全部自分で行う自営業のつもりでいると良いでしょう。
なので、前職や学生時のアルバイトで何を経験していたとしても、どれも必ず役に立ちます。 全部必要だからです。
何かしら、店舗業務に関わる仕事の経験があるとお店としてはとても助かります。(どう評価するは店長さん次第ですが…)
お花屋さんへの就職にフラワーアレンジメントスクールの経験があまり関係ないのは、この辺りの事情が大きいです。
フラワーアレンジメントを製作する時間というのは、全仕事時間で見たらほんの一部。
しかも、フラワーアレンジメントスクールで作るアレンジメントと生花店で販売するフラワーアレンジメントには方向性の違いも大きいため、そこまで重要視されないのです。
*参考:お花屋さんとフラワースクールの「フラワーアレンジメント」の違い
他業界であっても店舗業務に慣れているほうが即、経験を仕事に反映できるといえます。
目の前の作業をこなすことに意識が行ってしまうと毎日の繰り返しがつらくなりがちですが、お店全体の仕事を俯瞰して把握することができるようになると、自分のお店を自分で作る楽しさや喜びも大きく感じることができるようになるでしょう。