お花屋さんとフラワースクールのフラワーアレンジの違い

お花屋さんとフラワースクールのフラワーアレンジは違うもの

お花屋さんが作るフラワーアレンジメントと、フラワースクールで習うフラワーアレンジメントって、同じように見えますよね?

お花屋さんのフラワーアレンジを見て「あんな風に作りたいなあ!」と思ってフラワーアレンジメントを習いに行くというのも、よくあることだと思います。

これ、お花を習うときには、同じだと思っていても差し支えはありません。

ですが、「お花屋さんで働きたい!だからフラワーアレンジメントを習おう」そう考えているなら注意が必要です。

同じに見えてじつは中身がまったく異なるため、お花屋さんで働くためという目的を叶える手段にはならないからです。
お花屋さんの作るフラワーアレンジメントと、フラワースクールで作るフラワーアレンジメントとはまったく違うものだということを理解しておきましょう。

 

お教室・フラワースクールのフラワーアレンジメントとは

こちらのほうが、おそらく、あなたが思い描くフラワーアレンジメントに近いでしょう。
芸術としてのフラワーアレンジメントを楽しむ感覚です。

素敵な花がたくさんある場所で、ゆったりとした時間の中で、すてきなフラワーアレンジメントを作って、優雅な時間を過ごす。それが、一般的なお教室でフラワーアレンジメントをしている時間です。
ステキな時間の過ごしかたですよね。ゆとりの時間を楽しみつつ、技術も学べてすばらしいです。

お教室で花を習うときは、基本的に、花もアイテム類も、先生が選んでくれます。
使う花や花器の選択で、そのまま受講料というか花代が上下します。
受講料という範囲はありますが、きれいなデザイン、見た目にするため、予算をかけて流行の花、美しい花や花器を使うことが多いです。
自分の好みのセンスの講師の先生から、好みの花を使い、ゆったり時間をかけて、自分のためのフラワーアレンジメントを飾ることができます。

お花好きだなあ、キレイだなあ、って、たっぷり味わうことのできる、あなたのための、自分のための時間と言えるでしょう。

 

 

お花屋さんのフラワーアレンジメントとは

お花のお教室やフラワースクールで作るフラワーアレンジメントに対して、お花屋さんが仕事で作るフラワーアレンジメントはまったく様相が異なります。

オーダーメイドの花束やフラワーアレンジメントの場合、

・ お客さんと会話をしながらお客さんが思い描く未来図を聞き出し
・ お客さんの望む未来図を叶えるために
・ お客さん又はプレゼントする相手の好みに合わせ
・ かつお客さんの運搬方法で無事に運べるように
・ かつお客さんの予算内で花の種類、仕立て(デザイン)、資材を選びます。
 
そしてお客さんが見ている目の前で短時間で製作します。

お客さんが描く未来を聞き出し、その未来を叶えるための花の種類・デザイン・資材を選ぶ。
これは非常に難易度の高いコンシェルジュ業務となります。
かつ、5~20分程度の短時間で花束やフラワーアレンジメントをラッピング・梱包まで終えなくてはなりません。

目の前に材料がそろっていて時間をかければフラワーアレンジメントを作ることができる、というだけでは、お花屋さんでオーダーメイドの商品を作ることはまったくもって、できません。

製作時間に関しては、最近は製作そのものをコンテンツとして楽しんでもらうことができるよう、カフェや書店を併設したお花屋さんもありますが、一般的にはお客さんが目の前で待っている間に製作することになります。

花を使ってお客さまの幸せを叶える手段として、お客さんの用途や運搬方法でも痛まずかつ喜んでもらえる花を予算内で選ぶことができる花の知識やフラワーアレンジメントを作る技術が必要になってきますが、フラワーアレンジメントを作るということ自体は、お花屋さんにとってお客さんの幸せのための手段であり過程にすぎません

 

「花束やフラワーアレンジメントを作る」という部分だけを見れば、フラワースクールのフラワーアレンジメントもお花屋さんのフラワーアレンジメントも同じように見えますが、フラワーアレンジメントを作る目的や作る材料、デザイン、製作時間などすべてにおいて、捉え方・考え方そのものからまったく違うんです。

  

 

大きな違いは”自分のため”か”誰かのため”か

フラワースクールでフラワーアレンジメントを作るときと、お花屋さんが仕事でフラワーアレンジメントを作るときの大きな違いは、自分のためにフラワーアレンジメントを作るか、誰かのためにフラワーアレンジメントを作るか、という点です。

自分のため、という言葉には納得がいかないかもしれませんが…

・自分が好きな花、好きな花器で作っていい
・自分の好きなデザインで作っていい
・アレンジメントを作る時間をゆったり楽しんでいい

それが自分のためのフラワーアレンジメント、という意味です。
対して、お花屋さんがフラワーアレンジメントを作るときはお客さんが第一になります。

・自分がしたくなくてもお客さんのためになることを選ぶ
・自分が好きじゃなくてもお客さんの好みや移動手段・用途に合う花、デザインを選ぶ
・お客さまが目の前で待てる時間内に仕上げる

これは、自分の好きにフラワーアレンジメントを作る状態…ではありませんよね。
お客さんや、お客さんが花を贈る相手のためのフラワーアレンジメントを作るのが、お花屋さんの仕事としてのフラワーアレンジメントです。


 

お花屋さんは最初に「お客さんの幸せのため」が来る

お花屋さんは最初から、花を買うお客さんや、そのお客さんが花をプレゼントする相手のひとが喜ぶために、お客さんが花を買ったそのあとのほんとうの「目的」を果たすために、フラワーアレンジメントを作ります。

お客さんの目的は、花を買うことではありません。 
↑↑ここ、ものすごく重要!!

お客さんが望むのは、花を買った ”あと”

・ プレゼントが喜んでもらえたとか
・ やさしい気持ちになれたとか
・ 毎日がゆったり過ごせるようになったとか
・ 庭に出るのが好きになったとか
・ おかげでパパが子どもとよく遊ぶようになったとか
 
お客さんの暮らしが、買った花を通過することで幸せになることです


お花屋さんは、お客さんが買った花を経てしあわせになれるようにフラワーアレンジメントを作ります。
その意味でお花屋さんの仕事は縁の下の力持ちであり、コンシェルジュ業務的なものです。

ここに自分の好きな花や、自分の好きなデザイン、自分がゆったり作りたい、といった自分の願望は基本的に入る余地はありません。(もちろんお客さんとの望みと一致していれば自分の好きな花が使えて嬉しいということはあります)

お店の掃除や花の手入れもお花屋さんの大事な仕事

フラワースクールで花を活けるときはきれいな花が既に準備されていますね。

お花屋さんは、フラワースクールにそのきれいな花を納品することも仕事のひとつです。
きれいな花がいっぱいで喜んでもらえるように、花の手入れをして、キレイな花だけを届けます。
花のきれいじゃない部分のお手入れ、手入れした下葉や枯れた部分の処理を行います。

お花屋さんでは、フラワーアレンジを作る時間よりも、そうした掃除や水仕事、事務などの雑務のほうがメインになります。
お花きれいで嬉しいな、と思ってもらうことも仕事だからです。

フラワーデザイナーさんやフラワースクールの先生が花形のアイドルなら、街のお花屋さんは裏方の黒子です。

まったく違う方向性だということを理解していないと、お花屋さんで働き始めてから「なんか違う」「こんなはずじゃなかった」ということになってしまいますから、あなたがなりたいのはどっちなのか、一度じっくり考えてみてくださいね。

 

 

自分のため・自己表現の結果、誰かを幸せにすることもできる

もちろん、自分のためを突き詰めた結果、誰かを幸せにできることもあります。
自分のために花を習って花を飾った結果、結果的に誰かを幸せにすることは可能です。

この部分を極めて、自分の作品を作ることで見た人を幸せにする芸術家がフラワーデザイナーさんだと言えるでしょう。人気のフラワースクールの先生もそうですね。

このフラワーデザイナーさんやフラワースクールの先生になるために通うのがフラワースクールです。
デザイナーや先生にならない場合でも、資格取得や知識や技術の習得自体が目的で通うこともあるでしょう。

フラワーデザイナーさんが「デザインする」という仕事をするときは、美を極めるために納得行く花の種類・花の質・花の量、時間をかけて美しさやその世界観を極めます。それはまさに「芸術の世界」!とても素晴らしいものです。

ただ、一般の街のお花屋さんとはまったく違う世界だということは理解しておく必要があります。

 

芸術面に重きを置いた花の仕事もあります

あなたもきっとよく目にするであろうテレビのスタジオ装飾や、結婚式のパンフレットに載っている会場装飾などは、フラワーデザイナーさんのスタジオなど、専門のスタジオや高級生花店が担うことが多いです。とても綺麗で素晴らしいですよね。

ただ、結婚式のパンフレットに載っているような素晴らしい会場装飾は、式場のパンフレットに載っている装花代ではできないと思って。2020年のゼクシィによると、結婚式の装花代にかける平均額は約18万円だそうです。おそらく平均的な装花プランの価格だと思われますが、ゼクシィに載っている会場写真のようにするにはおそらく50万円以上かかるでしょう。

ステキな花カレンダーの写真や、スタジオの素敵なフラワーアレンジ、ホテルのエントランスの活け込みといったフラワーアレンジには1点につき3~10万円くらいかかっていると思って。
写真映え、映像映えするほどの高級花材や花の量を使えば、価格はぐんと上がります。

対して街のお花屋さんの場合は自宅用の数百円の花から始まり、ギフトであっても一般の方が生活の中でお友達に花をプレゼントする場面のためのフラワーアレンジメントであることが多く、花束やフラワーアレンジメントの価格は3000~10000円くらいです。
目的・用途によって、フラワーアレンジメントに使う花の種類も分量も、作るフラワーアレンジメントの大きさも変わってくるためです。
予算が10倍違えば花束やアレンジメントに使うことのできる花の種類がまったく違いますし、10分20分という短時間で仕上げるので作り方もまったく異なってきます。
街のお花屋さんの花はもっとずっと庶民的な、隣人に食卓に飾る花を手渡すようなものだと思っていると良いでしょう。
もちろん街のお花屋さんも大きな仕事をすることはありますが、常時大きな仕事をするスタジオや高級生花店と、街のお花屋さんとは別。行う仕事が違う、と思っておきましょう。

このようなデザイン主体の大きなフラワーアレンジメントの仕事がしたい場合は、フラワーデザインスクールに通うことをおすすめします。お教室のツテで仕事に巡り合えるかもしれません。
普通の街のお花屋さんで仕事をしながらデザインスクールに通い資格も取り、ツテを得てデザイナーズスタジオに転職する方もいます。

 

 


この記事を書いた人

878work

生花店アルバイトから正社員登用→チーフ→店長になり、スタッフの採用・指導を含め店舗計画・仕入れ・ブライダルまですべての業務を管轄した経験をもとに、お花屋さんになりたい人、新入りスタッフさんのお悩みに答えている。超就職氷河期の東京農大卒