お花屋さんには社会的役割があります

「お花屋さんってどんな仕事?」と考えるとき、多くの人が「花を売っている店」と答えます。
これも間違いではありませんが、仕事としてお花屋さんを選ぶなら、お花屋さんには知っておくべき社会的役割があります。

お花屋さんは「花を売っている店」じゃないの?

「お花屋さんは、花を売っている店」
これは、間違いではありません、事実です。

ですが、店に立つ、働く人間が「自分の仕事はここにある花を売ることだ」と認識してしまうと、本来すべき本当の仕事にたどり着けません。

お花屋さんは、花を仕入れて販売することで、花をとおして、花の購入者や贈り先、家族など周囲の人を幸せにすることが仕事です。

花が売れていくのはあくまでも通過地点であって、目的地ではありません。

 *参照→「お花屋さんの仕事ってどんなもの?」

お花屋さんは 花をとおして幸せを配る人。

まず、これが大前提です。憶えておいてくださいね。

 

あなたはどんな時にお花屋さんに行きますか?

現代、お花屋さんは花が売れない、と嘆くケースが多いです。

この要因には
そもそも、店を訪れる人が少ないことが挙げられます。
ではなぜ、人々はお花屋さんに行かないのでしょうか?

これは、いまお客さん側の立場であるあなたのほうが思い浮かべやすいのではないでしょうか。
ちょっと考えてみてください。

あなたがお花屋さんに行くのはどんな時ですか?
では、それ以外のときにはなぜ行かないのでしょう?
何があれば、お花屋さんで花を買うかもしれない、と思いますか?

以下はわたしの考えですが・・・


現代、一般的な人は、母の日や送別会・演奏会・展示会といったイベント時には「花を贈ろう」という選択肢が思いつきますが、それ以外の日常に花屋さんに足を運ぶことはあまりありません。

*すでに花が好きで常に家に花を飾っている人や、ガーデニング大好きで植物の苗を良く買う人は除きます。

 

もう一段深く考えていきますよー!

多くの人は、「花のある毎日」というものを知らない

21世紀の現代の日本の特に都市部では、常に家に花がある暮らしをしている人は少ないため、花のことが分からない、知らない、というのが普通です。

・そもそも、日常的に家に花を飾る習慣がない
・花を飾ると家の中の空気が「なんかいい」を体感したことがない
・そもそも、どの花を買えばいいのか分からない
・花をどうやって家に持って帰ったらいいのかも分からない
・花をどう触ればいいのかも分からない

・どうお世話をしたらいいのか分からない

頂きものなどで特別に花があることがあっても、特別すぎてどう扱えばいいのかまったく分からずにすぐに枯らしてしまい「花なんて、すぐ汚いゴミになるからいらない」と考える人も珍しくありません。

知らないから、特別なもの、すごい世界のものと感じるようになります。

●ウチには花瓶ないし…
●専門の道具もないし…
●お金かかりそうだし…
●センスないし…
●難しそうだし…

「だから自分には縁のないもの」
そう考えていると、そもそもお花屋さんには来ません。行けないですよね。


だからお花屋さんに行くのは、母の日や発表会・お見舞い・卒業式に人数分必要など、「こういう場合は花を贈るもの」という認識のあるときのみになる。


このような方が多いのではないでしょうか?

 

母の日は年に1回ですよね。
発表会やお見舞、卒業式になると、数年に1回あるかないかになってきます。

花を贈る相手の方も同じように花の扱いが分からない場合、「花をもらっても困る、別のものが良い」となってそのごくまれな機会にも花を選ばない可能性も高いです。

 

 

昔は花があれば売れた=花のある生活をしていた

昭和までさかのぼると、こうではなかったと思います。

一般的に、普通の戸建ての家庭には、畑や果樹園を兼ねた庭がありました。
自宅で野菜や果物を育てて採って食べ、植物を暮らしに活用し、摘んで飾って見ても楽しむ暮らしが一般的でした。
季節の移り変わりを花で楽しみ、節句や季節行事には花を飾り、家に花を欠かしませんでした。

こういう状況で、自宅にはなかなかない西洋種や見目麗しい花を並べれば、それだけで花は売れたのです。

ふつうの人々にとって
・家に花が飾ってあるのが日常
・家で植物を育てているのがあたりまえ
・自分で花を選んで手入れして飾ることができる

そんな人が多かったからです。

現代ではふつうの人は、
・毎日家に花はなく
・育ててもいなくて
・扱い方も、飾り方も、育て方も分かりません。

現代のお花屋さんは、この位置からスタートする必要があります。


お花屋さんを利用するお客さんが増えるためには?

時が流れ、団地やマンションで育った人が増え、そもそも花と触れ合って暮らしたことがない人が増えた現代では、お花屋さんは、花と暮らす良さを知ってもらうことから始めないといけないのでは?とわたしは考えています。

そのためには、仕入れた花をただ並べて待っているだけではダメです。
みんな花のことを知らないから、目に留まらない。

「自分の手には余るすごいもの」だと思われてしまっても買ってはもらえません。
すごい世界の遠いものではダメなんです。

自分にもできるもの、身近なもの、あると嬉しいものだと思ってもらえるようにすることからが、お花屋さんの仕事です。

「じゃあ、どうするのか?」

私は、暮らし方の提言から始めないといけないと思っています。
こんな暮らしもいいよ、という情報提供ですね。


「花のある暮らし」・生き方を提案・提供するのがお花屋さん

お花屋さんは花をとおして、花の購入者や贈り先、家族など周囲の人を幸せにすることが仕事でしたね。
これには花を仕入れて販売するという直接的に花を提供することももちろん入りますが、現代ではこれに加えて花のある暮らしを提案することもお花屋さんの仕事といえます。


花のある暮らしの幸せを提供するために

・花を売り
・花のことを教え
・花の扱い方を教え
・こんなふうに花を飾ると簡単で長持ちして良いでしょう?と
・暮らし方そのものを見せる ことも仕事のひとつになるでしょう。

 

海外から来た花も良いですが、日本にもともとある花や、日本の花を愛でる文化や行事を伝え、残していくことも、花屋さんにとってとても意義のあることです。
日本では、平安時代には花を愛で、花のことを歌にしていますよね。そのくらい、もともとみんな花が好きな民族なんです。

・日本の四季の花
・四季の植物を飾ったり、食べたり、使ったりする日本の行事
・日本の節句


といった日本の文化を伝え、継承していく役目も
お花屋さんは担っているのではないでしょうか。

お正月に松と花を飾ることを伝える。
桃の節句に春を迎える花を飾る。
桜の花を愛でよう。
芍薬や花菖蒲を愛でよう。

七夕に笹を飾ろう。
日本の夏の涼の過ごしかたを。
お盆にはご先祖を迎えよう。
夏にもできる花の楽しみ方を。

敬老の意を表す花を。
お彼岸にはご先祖に花を供えよう。
年で一番きれいな月を見上げよう。
秋の紅葉や実りの楽しみを。
冬の寒さの中に咲く花を。

現代人が忘れかけている日本の花を愛でる文化を伝え残していくことは、日本という国の文化の継承という大きな仕事の担い手になるとともに、そのまま花屋さんにとっては売上にもつながります。家庭に花が増え、花のある暮らしを送る人が増えますから良いことしかありません。

これからのお花屋さんを担うあなたへ


季節の楽しみ方、植物と過ごす暮らし方を提案していくことも、これからの花屋さんには必須の業務になります。
プロからの提案がなければ、花との暮らしに慣れない方には、どの花をどう楽しんだらいいのか分かりません。
たくさん提案してあげてください。

そうして、みんなが季節の植物・花々を愛でるようになれば花は売れますし、みんなが「花が家にあるっていいな!お花ください!」ってお店に来て買ってくれるようになったら花屋さんも嬉しいですよね?

花にかかわる全員が嬉しい!最高じゃないですか。

そのために、みんなが花のある季節を楽しむことができるために、下地・文化から作ることを、お花屋さんの仕事だと考えてほしいな。
(現代の状況を鑑みると、復興させるイメージが近いのかもしれませんが)

 

具体的に、どんなことを、どのようにやっていくのかは、その違いこそが店の個性であり、スタッフの腕の見せどころなので、スタッフ1人1人、お店ごとに違ってくるでしょう。

さあ、あなたはどんなことをやりたいですか?


こんなことをしたらどうかな。
こんな風にやってみたいな。


そんな「ワクワク」が浮かぶなら、あなたはお花屋さんにとても向いています!

その「やりたいこと」をして、ぜひ多くの人に花のある暮らしの幸せを伝えてください!

(わたしがやっていた事例は、教材の中でお伝えしています)

この記事を書いた人

878work

生花店アルバイトから正社員登用→チーフ→店長になり、スタッフの採用・指導を含め店舗計画・仕入れ・ブライダルまですべての業務を管轄した経験をもとに、お花屋さんになりたい人、新入りスタッフさんのお悩みに答えている。超就職氷河期の東京農大卒